コア-分子混合模型によるエキゾチックメソンの解析
Mar 21, 2024
Abstract
クォークは物質を構成する素粒子の一種である.クォークはカラー閉じ込めによって高温・高密度状態を除き単体で観測されることはなく,ハドロンと呼ばれる複合粒子として観測される.通常のハドロンとしてはクォーク 1 個と反クォーク 1 個からなる $\pi$ 中間子などのメソンと,クォーク 3 個からなる陽子や中性子などのバリオンがある.しかし,クォーク模型では提唱され た 1964 年の時点ですでに 4 個以上のクォークからなるハドロンが予想されており,実際に 2003 年に Belle 実験によって $X(3872)$ が報告されて以来,通常のハドロンとして説明することが困難なハドロンの報告が相次いで行われている.これらの通常とは異なるハドロンはエキゾチックハドロンと呼ばれている.ハドロンの構造は主に quantum chromodynamics(QCD) によって決定されるが,ハドロンのエネルギースケールでは QCD は摂動論による計算が不可能であり有効模型が用いられる.通常のハドロンはクォーク模型で非常に良く説明されるが,エキゾチックハドロンはより複雑な構造をもつためクォーク模型だけで説明することが難しく,様々な有効模型が考えられている.エキゾチックハドロンの構造としては,複数のハドロンが重陽子のように束縛しているハドロン分子状態や,構成しているクォークの全てが一つに集まっているコンパクト状態,それらの重ね合わせ状態などが考えられる.エキゾチックハドロンの構造については多くの議論があるが,未だ 決着はついていない. $X(3872)$ は最もよく知られているエキゾチックハドロンの一つであり,2003 年に Belle 実験 によって報告された後も様々な実験で報告されている. $X(3872)$ は $J^{PC} = 1^{++}$ であり,その 質量は $D^0\bar{D}^{*0}$ の閾値に非常に近く,質量差は $m_{X(3872)} − m_{D^0\bar{D}^{*0}} = −0.04$ MeV である.また $X(3872)$ の質量は Godfrey-Isgur の相対論的クォーク模型から予測される $\chi_{c1}(2P)$ の質量 $3953$ MeV とも近い. $X(3872)$ にはコンパクト状態,ハドロン分子状態,チャーモニウムとハドロン分子の重ね合わせ状態など様々な状態の理論研究が存在している.本研究では $X(3872)$ を $D\bar{D}^*$ のハドロン分子と $D^*\bar{D}^*$ のハドロン分子,チャーモニウム $\chi_{c1}(2P)$ のコアの重ね合わせ状態として解析する.ハドロン分子の相互作用として One Pion Exchange Potential(OPEP) を考える. OPEP にコア-分子混合のポテンシャルを加えた連立 Schrödinger 方程式を Gaussian expansion method(GEM) を用いて解く. $X(3872)$ の結果を用いて他のエキゾチックハドロンの構造を解析をする.
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